水晶の不思議。なぜ結晶が長細いの？

水晶をイメージしてください、というと大抵の方は細長い六角錐を考えるのではないでしょうか。

実は水晶の結晶の形状はいくつかあるのです。

高温環境、または不純物が多いと短い結晶に、低温環境では長い結晶になります。

 

【温度が原因】

一般に水晶が生成される時に高温下だと側面が短い水晶生成され、低温下だと長い水晶が形成されます。

普段よく目にする六角柱に三角錘面の先端を持つ水晶は、573℃以下の環境で形成された低温水晶(アルファクォーツ)です。

573～867℃の高温下では、側面が短いかまたは無く両先端に三角錘面を持った水晶が形成されます。これを高温水晶（ベータクォーツ）と言います。
高温水晶と低温水晶では結晶構造も異なり、低温水晶を573℃以上の高温下に置くと、形はそのままで高温水晶結晶構造へと変化します。

 

【トリディマイトとクリストバライト】

では、これ以上の温度ではどうなるのでしょう。

867度以上ではトリディマイト、1470度以上ではクリストバライトという同じ二酸化珪素でも結晶構造が異なる鉱物となります（同質異像）

 

クリストバライトはトリディマイト→β水晶→α水晶が形成され、それぞれ温度が下がると安定する鉱物へと構造を変えて行きます（移転）
クリストバライトはスノーフレーク・オブシディアンに含まれるスノーフレークの部分です。
クリストバライトとトリディマイトは高圧高温に耐えるために工業用として合成され、高圧線のガイシ（鉄塔と電線の絶縁体）や磁器、半導体などに使われています。

 

【コーサイトとスティショバイト】

圧力が高くなると、コーサイト、スティショバイトと構造が変化します。

地表では存在が稀ですが、マントル遷移層から下部マントル程度の高圧条件下では二酸化ケイ素はスティショバイト構造をとると考えられています。

1962年のバリンジャー隕石など、隕石が地表に衝突した際にも生成することが分かっています。

【不純物が原因】
アメシストやローズクォーツなどの結晶が短いのは、チタンや鉄などの不純物を含むため。

二酸化ケイ素が結晶を形作る際に不純物が邪魔をするので、長い結晶にはならないのです。

水晶の形成は高温なら必ず短いというわけではなく、ハーキマー水晶は低温下で形成されていますが、内包物の影響で短い結晶形を持ちます。
ベラクルスアメシストのように例外的に長い結晶を持つものは珍しいのです。
 

【貫入双晶について】

元々ある結晶を巻き込んで新しい結晶が成長した水晶で、突き刺さってみえることから貫入と呼ばれます。

十字石の双晶も貫入によるものです。
実際に中に結晶がある場合と負晶（ネガティブクリスタル）という、中は空洞になっている結晶の場合があります。
負晶の場合は水晶が生成される途中にガスで満たされた空洞ができ、その空洞中にも結晶の規則性に従って成長した為に逆型に結晶化したと考えられています。
また、特殊なものではドフィーネ式双晶やブラジル式双晶というものがあり、一つの結晶に見えて、実は二つの水晶が貫入して成長した双晶です。

【右水晶・左水晶について】
錘面と側面の間の右側に小さい面があると右水晶、左にあると左水晶です。
鉱物学的なスパイラルに基づいて考えると、右水晶は左スパイラル、左水晶は右スパイラルと逆向きになっています。

右手でイイネ！を作って、右ネジ（爪先に向かってねじると親指の方向に前進する）をイメージするとわかりやすいかと思います。
右水晶同士、または左水晶同士が貫入したものをドフィーネ双晶、右水晶と左水晶が双晶したものをブラジル式双晶と呼びます。特にブラジル式双晶は珍しい形です。

【隣り合う結晶面の角度】
鉱物は、互いに接する二つの結晶面の角度が決まっています。
水晶の場合、柱面と柱面の角度は１２０度、錐面と錐面の角度は１３３度４４分ですので、分度器で面の角度を測ると天然の結晶形が磨かれたものかがわかります。

 

水晶の形ひとつでも様々なことが分かるのですね。

 

 

【引用】

画像2、3枚目

二酸化ケイ素の結晶構造について 奈良県立畝傍高等学校教諭 卜部𠮷庸様より引用

https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/25/Sc25_3.pdf