金属アレルギーを起こしにくいジュエリーとは

金属の有用性とリスクを正しく知ろう

 

ジュエリーに用いる、金・プラチナ・銀は財産的価値が高く、加工性に優れ、化学的に安定している貴重な金属です。

その特性を更に生かすために、割り金という他の金属を加えて、例えば金はK18、プラチナはPt900、銀はスターリング(Ag925/SV925)などのような合金を作り、加工性や硬さを向上させます。

 

それらの金属やジュエリーの加工に用いるもので、気になるアレルギーを起こす金属を紹介します。

 

金属アレルギー性接触皮膚炎を起こす可能性のある身の回りの金属には２０種ほどが知られていますが、ニッケル、コバルト、クロム、水銀などがよく話題にのぼります。

リスクと有用性を正しく知ることで、ジュエリーを選ぶ際の参考にお役立てください。

 

 

ニッケルアレルギー

 

●ニッケルアレルギーの症状

ニッケルアレルギーの症状は皮膚の乾燥、肌荒れ、湿疹、水膨れ、炎症などです。

調査では平均12～15%の女性が、1～2％の男性がニッケル感作性だとされています。

女性の方がピアスなどのジュエリーやファスナーなど肌に触れる機会が多いことが要因です。

 

●ニッケルの有用性

ニッケルは耐食性が高く、耐久性に優れ、高低温での強度が高いとても有用な金属です。

この特性を生かして、食器や台所で用いるステンレス鋼、めがねやワイシャツ、ブラジャーに用いる形状記憶合金、50円・100円・500円硬貨の白銅などの金属に高い比率でニッケルが用いられています。 

 

硬貨に触れることで、ニッケルアレルギーが引き起こされるとは考えられていません。

ニッケルアレルギーの人が1日8時間ニッケル含有硬貨に触れ続けることを10日間続けてもアレルギー反応は出なかったという調査もあります。

 

●食事も含まれる必須元素

ナッツ、チョコレート、豆を含むいくつかの食品は生来ニッケルを含んでいます。ニッケルに対して極めて感作が鋭いごくわずかな人（とても低いレベルのニッケルにも反応する人）を除くと、これらの食品を摂取することによって、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こすことはありません。

 

 

コバルトアレルギー

 

●コバルトアレルギーの症状

接触性皮膚炎による皮膚の乾燥、肌荒れ、湿疹、水膨れ、炎症などです。

 

●コバルトの有用性

コバルトは鉄と似た性質を持っており、非常に磁性が強い金属です。

丈夫な酸化被膜を形成し高温化や摩耗、腐食にも強いため、合金材料としての需要も高く、電気自動車やスマートフォンなどのバッテリー、ジェットエンジンやドリルビットなどの耐熱合金、エナメル塗料や釉薬、意外なところでは石油の精製にも使用されます。

 

 

クロムアレルギー

 

●クロムアレルギーの症状

接触性皮膚炎による皮膚の乾燥、肌荒れ、湿疹、水膨れ、炎症などです。

クロム単体、三価クロムは人体に無害です。しかし、六価クロムは有害で、強い酸化作用を持ち、その化合物も非常に強い毒性を持ちます。

 

●クロムの有用性

クロムは鉄より酸素と結びつきやすいという特徴があります。
鉄に１２％以上のクロムを含ませると、鉄が酸化するよりも先にクロムが酸化し、無色透明でとても薄い膜を形成します。この膜は化学的に強固で安定しており、酸素を通さないので酸化鉄（サビ）の発生を防ぎます。 

また、クロムは多くの革製品になめしの工程に使用され、革製品に触れておこる接触皮膚炎の中にクロムなどの金属アレルギーが隠れている場合もあります。

 

 

水銀中毒

 

●水銀中毒の症状

急性症状としては流涎、おう吐、腹痛、下痢、頭痛、悪寒、しびれ、めまい、視覚・聴覚異常など強い中枢神経系への毒性が知られています。

水俣病の原因となったメチル水銀も水銀の一種です。これは化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物を、魚介類が直接エラや消化管から吸収、あるいは食物連鎖を通じて体内に高濃度に蓄積し、これを日常的にたくさん食べた住民の間に発生した中毒性の神経疾患です。

 

●水銀の有用性

常温・常圧で、液体で存在する唯一の金属です。

他の金属との合金「アマルガム」を容易に形成し、比重が大きく、鉄さえも浮かせられる特性を持ちます。金採掘・精製や、塩化ビニール工業など商用や工業で使われています。

奈良時代の東大寺の廬舎那仏（大仏）建立時の金メッキ塗装には２トンを超える量が用いられたそうです。

 

 

鉛中毒

 

●慢性的な鉛中毒の症状

過敏症、食欲と活力の低下、腹痛、貧血などです。

鉛の濃度が非常に高い場合は、急性脳障害を起こし、それと共に嘔吐、千鳥足、けいれんと昏睡が起こります。

 

鉛入りのライフル弾、散弾による鳥獣の死亡報告も多く段階的に使用を禁止されています。

このように体内に入った鉛は危険ですが、鉛の肌への接触による害は起こらないとされています。

 

ジュエリーに用いられる貴金属には、鉛は含まれていません。

貴金属に鉛が混入すると、素材が脆くなり加工が困難となるためです。

同時に、製造現場では金床として鉛を使うことがありますが、その破片が地金に混入しないように細心の注意を払っています。

 

●鉛の有用性

廉価でリサイクル可能な鉛バッテリーは、自動車をはじめ電気通信、非常用電源、フォークリフトなどに利用されています。

また、鉛は原子番号が高く密度が大きいため、病院のレントゲン室などで放射線の吸収材料として広く利用されています。

 

 

 

対処法

 

●金属アレルギーの検査

金属に対するパッチテストを行います。また、全身性金属アレルギーでは、金属を多く含有する食べ物を用いた負荷試験や除去試験を行い、症状の変化により診断する場合があります。

 

●金属アレルギーの治療

皮疹に対してはステロイド軟膏の外用や抗ヒスタミン剤の内服を行います。

発症予防には原因となる金属との接触あるいは摂取を制限する必要があります。

全身性金属アレルギーでは過剰な食事制限は逆に体調不良をきたす可能性もあるため、必ず診断の確定と栄養の管理は医師の指導のもとに行いましょう。